第02話-1

6月・・


暑い日が続き、週末はいよいよ本格的に海岸が賑わって来ているセルムラント共和国

この日は、いつも地下にキノコのように巣くっているシュウが珍しく屋上に出ていた

・・なんでも、ワケのわからん兵器の実験に日の光が必要なのだそうで・・(ソーラービーム?)


・・ロディも珍しく街に出かけていた

事務所を出てパン屋の前の歩道を通り、さらに50メートルほど行くとある最寄りの駅

トランスポーター・ラディオンは諸般の事情(金ない)で使えないので、社員は皆安価な鉄道を使う


・・「ユーニス国立公園」駅・・


やはり海を前面に置いた国であるため、ここの公園には割と人の行き交いが多い

ロディはそんな公園を通り、駅に行き・・電車に乗り込んだ

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「次はメインターミナル・・終点、メインターミナルでございます・・」


アナウンスで座っていた乗客が一斉に荷物をいそいそとまとめ始める

土・日の休日である今日は、やはり人混みが目立つ

ロディの乗っていたこの車両も、狭くはないが・・かなり人が・・


「まもなく駅に到着します・・お忘れ物のないよう・・」


・・到着した先はセルムラント共和国の首都、とはいってもユニオンリバー事務所からラディオンでも30分足らずで到着できる場所にある。


天空高くそびえる、という表現がまさに似合う、超巨大なタワー

セルムラントの行政から鉄道センター、情報局、ショッピングモール・・

ありとあらゆる重要拠点が豪華に勢揃いした、ある意味ではテロリストの格好の的とでも呼ぶべき建物。

(なぜか今まで一度たりとも狙われた試しがないのだが・・・やはり平和ボケ国家たる所以か?)


・・別にロディはこのご大層な建物に用事があるのではない

近場にはロディの行きつけのガン・ショップ・・

前回メイとセラがお使いに出かけた、おっちゃんの店があるのだ


「よう、元気ィ?」

「おー・・「スタン」、よく来たな」


昔の顔なじみ、という事もあってか奇妙な呼び名で呼ぶ「おっちゃん」

(名前の略称ではなく、彼を名字の略称で呼んでくる)

おっちゃんの本名は・・実はロディも未だ知らない(汗)

ちょっと渋めの中年で、背丈はロディより少し高く、ややがっちりした体型は山男でも食っていけそうな印象がある

・・しかし、実際はロディ同様偏った趣味を持つ「同志」だった


「この前は大変だったらしいじゃないか、お使い帰りにお嬢ちゃん達が誘拐されたって・・」

「ああ・・セラがいれば大丈夫か、と思ったんだけどな・・」

「こりゃいい加減、億劫でも自分で買い物に来る癖つけないとな?」

「へっへっへっ・・・」


ロディはしばらく苦笑いを浮かべていたが、すぐにおっちゃんとレイノスの新型ユニットの話を始めた

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「くか~・・・」


世にも間抜けな顔で居眠りをしているロディ

ここは帰りの電車の中・・

ロディはおっちゃんに新型ユニットのコンセプトを相談し、早速無い金払って注文してきたのだ。

シュウに任せると度の過ぎたユニットしか作れないため、ロディはおっちゃんにいつもユニットの製作を任せていた


・・・鳥が飛んでるなぁ・・


ものすごく平和な夢を見ているらしい彼の表情は、もっと格好悪く見えてくる


・・・きぃぃぃぃ・・・


「・・・ん?」


妙なブレーキ音で彼は目を覚ました

・・どことなく、急ブレーキをかけたような感じを受ける・・

周りの乗客がなにやら慌てているようだが、寝ぼけている彼にはいまいち分からない

やがて・・慣性が身体にかかって、彼は席の隣へ、斜めに倒れてしまった


「っとっ!?・・・な、なんだっ!?」

・・きぃぃぃ!!!!


がっごぉぉぉぉん・・・・

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・・鉄道の「事故」から四時間後・・

メインターミナル近くの国立病院に、包帯をぐるぐる巻かれ、ベッドに横たわったロディの姿があった


「よかったですねマスター、全治一週間くらいで済んで、保険も降りて・・」

「・・よかねぇよ」


ロディはぶーたれた顔で、頬に張ってあるテープをさすりながらぼやいた

突然の不幸な事故だったが、幸いにも軽傷者と四人の重傷者が出たに留まっていた


・・四人の一人が、ロディだ。

ちなみに重傷とは言った所で、他の三人も「骨を折った」など割と軽い方らしい。


ロディの場合はあばら三本にひび、全身打撲、頬と額に破片による切り傷を受け・・

本人は「帰る」と言い張るにもかかわらず、強制的に入院することとなってしまった


「・・せっかく仕事楽しみにしてたのによ~・・」

「海賊退治がですか?・・そうですよね、あなたならあーいう仕事の方が向いてますよ」

「違うぞ、遺跡調査だ。」

「・・・」


ネスの目が、ぱちくりと瞬きする


「・・私は海賊退治の依頼主に、仕事の申請を・・」

「俺がキャンセルして、遺跡の方に仕事入れておいた。」

「・・・・・・・・」


ネスは座っていた椅子を立つと、てくてくと個室の入り口の方へ歩き・・

そこのテーブルにある、病院食の乗ったトレイをしか、と掴むと叫んだ


「こんのうつけ者ぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!」


すっこーん!!


「どあっ!?」


・・顔面直撃するトレイ、そして辺りに散乱する食器etc・・・

せっかくネスが安全を考えて回避した事が、全く無駄になってしまった。


「・・キャンセルするなんて会社の信用問題になりますし・・・仕方ない、私たちだけでやりましょう」

「お、おい・・俺が・・」

「・・怪我人は寝てなさいね!?

「・・・へい。」


ロディはトホホ、と残念そうな顔をして、ベッドに潜ってしまった

かくして・・

勝手な事するバカ社長のせいで・・


月の遺跡などという、前人未踏の場所へユニオンリバー社は踏み込むこととなった。


・・もちろん、ロディはお留守番で・・


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第02話「夜空の月の大怪獣」


仕事内容(メニュー):月面第88号発掘遺跡の調査・先行部隊の捜索

目的地・標的(ターゲット):月面第88号発掘遺跡


依頼人(クライアント):遺跡調査解明団体
           「チーム・オブ・ディグアウター」(T.O.D)

注意事項(ワーニング):先行したS.Gとの合同調査隊が深度4(シアー)で行方不明になった。
           ひょっとしたらトラップが発動して大変な事になっているのかもしれん・・
           君達のいい評判も聞いてはいるが・・貴重な遺跡を破壊しないでくれ・・



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